maximam271828’s diary

あなたの人生に少しの砂利を

つめたい「本当」とあたたかい「嘘」

  「この服似合ってる?」

 明らかに似合っていないのにこういう質問を受けたことはないだろうか。もちろんこの問いへの模範解答は

  「良く似合ってるね、かわいいよ/かっこいいよ。」

 である。このように、こういった質問の期待される解答は70~80%決まっている。このやりとりをしている登場人物がカップルだとテンプレのイチャつきとして成立するのであろうが、ちょっと仲がいいくらいの友人関係だとそうはいかない気がするし、このような単純なやりとりであってはいけないと思う。

 

 この状況の解答は5通りほどに大別することができる。

 ・「似合ってるよ、それを買いなよ!」

 ・「似合ってるけど、他のものも試してみなよ。」

 ・「似合ってはいないと思うけど、自分が好きならチャレンジしてみたら?」

 ・「似合ってない!他のものにしよう!」

 ・「センスないね。」

 この記事のテーマの都合上、最後の選択肢には触れないでおこうと思う。最初の選択肢は、暖かい嘘+同意。2番目の選択肢は、暖かい嘘+反対意見。3番目の選択肢は、冷たい本当+同意。最後は冷たい本当+反対意見。であるとし、それぞれについて考えてみる。

 

1,暖かい嘘+同意

 この選択肢をとった場合の目的はその場で相手を傷つけず、同意をすることで後に起こりうる悲劇の責任から逃れることだと考える。似合っていないと考えているのにもかかわらず「似合ってる?」という質問をする人はなかなかおらず、その相手の考えを否定することにより相手を傷つけることを避け、また同意することで「自分の意見」感を極力少なくすることにより、後に似合っていないと第三者から指摘ないし変な目で見られる可能性の責任を回避しているということである。その時は相手のためを思っての行動だと勘違いしているのであろうが、全体として考えると自分が悪者にならないための無責任な行動と捉えることもできなくもない。

 

2,暖かい嘘+反対意見

 この選択肢は前半部分は1と同様に相手を傷つけないことを目的としているが、提案することにより自身の意見を介在させ、仮に後、元のままであっても、新たな提案を受け入れたとしても相手の選択をより納得感のあるものにすることを目的としている。「似合っている?」という質問はかなりいいと考えているがベストではないという気持ちの表れでもあり、仮にベストではなかった場合質問した相手へ責任のほんの一部分でも負わせることができる魔法の言葉である。そこで新たな「ベスト」の可能性を提案することによりその責任を負わず、また相手の最終決定により納得感をもたすバランス感覚の取れた選択だと言わざるをえないということでもない。

 

3,冷たい本当+同意

 この選択肢は2で説明したほんの少しの責任を確実に排除し、「似合ってない」という現実を突きつけながらも、その現実を踏まえた上で同意することにより相手の選択を尊重する心をみせ相手に自身の状態と選択の正当性を再度確認させることを目的としている。ここで相手の「似合ってる?」という質問を一蹴しつつも、相手の選択を尊重することにより、相手は真摯に質問に対して答えてくれていると捉え、自身の浅いファッションセンスを反省すると共に、自身の選択への責任を再認識する可能性があるとかないとか。

 

4,冷たい本当+反対意見

 最後のこの選択肢は、3の選択肢のように相手のことをしっかりと考え、相手の選択の意志を傷つけることになる可能性がありながらも積極的に選択の責任を我が身に受けより、良い「ベスト」を探す努力をしようとすることを目的としている。相手は初めこの反応に驚き、悲しむかもしれない。しかしその後の他者からのファッションチェックにおいて良い反応だった場合、友人の手柄は控えめに言い、悪い反応だった場合、その責任を友人に押し付けることが可能である。またより良い選択をするための言葉であるため一瞬傷つくことにはなるがいいことづくしであると断言する。

 

 ここまでタイピングを進めて結局何が言いたいかということであるが、「優しさ」とはなんなのかという問いかけをしたいと思う。

  

  優しさ:心温かく、思いやりがあること、または穏やかでおとなしいこと。

                                                                                           2023.3/9:weblio.jp

 心温かいことは置いておいて、思いやりがあるということは相手の立場を考えることができるということである。その程度は関係性にもよると思うが仮にも友人関係であるのであれば、そのときだけのことではなく近い未来くらいのことは考えても良いのではないか。そういう意味で1の選択肢は自分が嫌われるリスクも一瞬相手を傷つけてしまうリスクも将来のことも考えない、甘い選択なのではないかと考える。この文章ではファッションを例に挙げたが、普段、相手のことを思ってということを言い訳にして相手を、自分を甘やかしてはいないだろうか。「優しさ」が後に無責任になっていないだろうか。ネットが普及し繋がりやすく、切れやすくなったこの世の中で踏み込んだコミュニケーションを取ることはかなり勇気が必要なことである。だからこそ、リスクを取ってでも、数は少なくても、真の優しさをぶつけ合えるような友人を持つ自分は幸せである。